初秋のコルトレーン

かなたの西方浄土へ


火に煽られている、本日の「冷蔵庫整理…中華風おこわ」に、コルトレーンのサックスを聞かせてあげた(DAHOMEY DANCE)。
おいしくなるかは、フレディー(FREDDIE HUBBARD[tp])とご飯釜の吹けあがりしだいだ。


西に落ちかけた太陽の光を、焦燥に似た今の僕の気持ちが追いかけている。
こんなとき聞くのにふさわしいセッションだ(OLE,AISHA)。
秋の香りを含んだ山からの一陣の風に、森の木々がしばしざわめく。
僕のたましいが、なにかに連れて行かれそうになったとき、もち米を炊いている釜から立ち上り、そこはかと鼻腔くすぐるシイタケの香りに、まだまだ行くな、と引き止められる。

山の端の西日のひと欠片が、今日一日に別れを告げる瞬間、コルトレーンのソプラノがフレディハバードのペットに引き継がれた。
手を抜くことなく刻まれるマッコイ(McCOY TYNER[p])とエルビンジョーンズ(ELVIN JONES[ds])の信頼に満ちたリズムが、初秋の寂しさのさざなみから、押し返してくれる。
たそがれどきを迎え、この先の一抹の不安を覚えながらも、いまこの一瞬の暖かさに身をゆだねてみようかと思ってしまう(UNTITLED ORIGINAL BALLAD)。


やがて、西の太陽は、「鯉ヶ池」の先、西方浄土へ向けてゆっくりと落ちていく。