用語整理【放射線(radiation)】【放射能(radioactivity)】

いろいろな用語が乱れ飛んでいるが、思考の道具になるために、用語の定義を試みなければならないと思う。

放射能】とは、電離性を有する高いエネルギーを持った電磁放射能(【電磁波】)や粒子線のこと。

放射線(Ionizing Radiation)】を放出する能力を【放射能】という。
放射能】をもつ物質を【放射性物質】等という。

物質 原子核の種類 同位体
放射性物質 放射性核種 放射性同位体

放射性同位体】は不安定なため、一定の確率で原子核崩壊をおこし、それにともない【放射線】が放出される。
原子核崩壊はいくつかの形式がある。

崩壊モード 放出放射線 放射能 崩壊エネルギー
α崩壊 α粒子 粒子線 運動エネルギー
β崩壊 β粒子 粒子線 運動エネルギー
γ崩壊 γ粒子 電磁波

α崩壊等による運動エネルギーを熱エネルギーに変換し電気エネルギーとして回収するのが、【原子力発電】や原子力電池

放射線(radiation)】と【放射能(radioactivity)】
自然界には様々な種類の放射線を出す物質があり、多少でも放射線を出す物質が放射性物質と呼ばれ、放射能はその能力を指します。放射線放射能は同義語に使用されることも珍しくありません。【放射性金属物質】はその原子核よりアルファ(α)線、ベータ(β)線あるいはガンマ(γ)線を放射し、ラドンはアルファ(α)線を放射します。その能力は【ベクレル(Becquerels)(Bq)】で表示されます。ウランやラジウムの状態では岩石、水などに存在しますが、ラドンは気体ともなります。

【ベクレル(Becquerels)(Bq)】(放射能の単位)
ベクレルと名づけたのはフランスの物理学者であるアレキサンドル・ベクレル( Alexandre Edmond Becquerels)(1820-91)。キューリー夫妻と因縁が深い、同時代の学者です。一族には著名な物理学者が多い。1ベクレル(Bq)は、1秒間に1個の放射性核種が崩壊することです。
ベクレルは平成元年4月以降にこれまでのキュリー(Ci)に変わって用いられるようになりました。
1キュリー(Ci)は 3.7×1010 ベクレル(Bq)。

ラドン(radon)(Rn)】
原子番号86、ウラニウム鉱石から発生する放射能鉱物。マイナスイオン化された放射線(ionizing radiation)のα線(alpha particles)を放出する唯一の天然気体です。大気中のごみ、水分などに付着して大気に漂い、呼吸気管に付着するとDNA(遺伝子核酸)に損傷を与えて、肺がん(lung cancer)になる危険性が指摘されています。
ウラン系列のラドンラドン222)が主ですが、トリウム系列もあります。水、油脂やトルエンに大変溶解し易い物質です。ラドンは1900年フレデリック・ドルン(Friedrich Ernst Dorn)によって発見されました。当初はラジウム放射物(radium emanation )と呼ばれましたが、1923年にラムゼイ(William Ramsay)、グレイ(Robert Whytlaw-Gray)らによって質量が決定され、最も重いガスとしてラドンと呼ばれるようになりました。

【ウラン、ウラニウム(uranium)(U)】
原子番号92、天然元素の中では原子番号が最も大きい金属。比重が18.7で天然に存する元素のうち一番重い。質量 238、 235、 234の同位元素が存在します。ウランは原子力発電の核燃料に用いられているものです。ウランは放射性壊変(decay chain of uranium)を繰り返して安定的な鉛に変わっていきますが、その過程で生じるのがラジウムラドンです。

ラジウム(radium)(Ra)】
原子番号88。天然に存在する代表的な自然放射性元素。天然ラジウム放射線源、発光塗料などに使われていました。

【トリウム(thorium)(Th)】
原子番号90。灰色の金属である。天然トリウムの大部分はTh 232です。これは核燃料物質ウラン233になる重要物質です。トリウムは摂取されると骨に沈着し、α線を放出します。含有鉱石は 方トリウム(Thorianite)トール石(Thorite) モナズ石(Monazite)が有名です。