用語整理【シーベルト (Sievert)】

シーベルト (Sievert)】 は、生体への被曝の大きさの単位。記号はSv。SI単位である。
物質が放射線に照射されたとき、物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号Gy。定義J/kg)である。生体(人体)が放射線を受けた場合の影響は、受けた放射線の種類(α線γ線など)によって異なるので、吸収線量値(グレイ)に放射線の種類ごとに定められた放射線荷重係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出する。放射線荷重係数WRは、放射線種によって値が異なり、X線ガンマ線ベータ線ではWR=1、陽子線ではWR=5、アルファ線ではWR=20、中性子線ではエネルギーによりWR=5 - 20の値をとる。
Sv=放射線荷重係数×Gy

 実効線量(mSv=1000μSV) 内訳

  • 0.05: 原子力発電所の事業所境界での1年間の線量。
  • 0.1 - 0.3: 1回の胸部X線撮影。
  • 0.2: 東京とニューヨーク間を航空機で1往復
  • 1: 一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度(ICRPの勧告)。#被曝の対策を参照。放射線業務につく人(放射線業務従事者)(妊娠中の女子に限る)が妊娠を知ったときから出産までにさらされてよい放射線の限度。
  • 2: 放射線業務従事者(妊娠中の女子に限る)が妊娠を知ったときから出産までにさらされてよい腹部表面の放射線の限度。
  • 2.4: 1年間に自然環境から人が受ける放射線の世界平均。
  • 4: 1回の胃のX線撮影。( 2011年3月19日以前のバージョンでは「胃のX集団検診 - 0.6mSv/回」という説もある)
  • 5: 放射線業務従事者(妊娠可能な女子に限る)が法定の3か月間にさらされてよい放射線の限度。
  • 6.9: 1回CTスキャン
  • 7 - 20: X線CTによる撮像。
  • 10: 日本国原子力安全委員会の指針では一般人の「屋内退避」 ブラジル・ガラパリの1年間の自然放射線
  • 50: 電離放射線障害防止規則による放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が1年間にさらされてよい放射線の限度。 日本国原子力安全委員会の指針では一般人の「避難」 自衛隊・消防・警察(妊娠可能な女子を除く)が1年間にさらされてよい放射線の限度。
  • 100: 電離放射線障害防止規則による放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が法定の5年間にさらされてよい放射線の限度。電離放射線障害防止規則による放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が1回の緊急作業[2]でさらされてよい放射線の限度。
  • 250: 白血球の減少。(一度にまとめて受けた場合、以下同じ)
  • 500: リンパ球の減少。国際放射線防護委員会による人命救助を例外とする上限。
  • 1,000: 急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐など。水晶体混濁。
  • 2,000: 出血、脱毛など。5%の人が死亡する。
  • 3,000 - 5,000: 50%の人が死亡する。(人体局所の被曝については
  • 3,000: 脱毛、
  • 4,000: 永久不妊
  • 5,000: 白内障、皮膚の紅斑)[3]
  • 7,000 - 10,000:99%の人が死亡する。
  • 10,001以上

放射線の人体に対する影響は、被曝した体の部分などにより異なる。上記の表ではX線撮影、X線CTおよび注記されているもの以外は全身に対するものである。
X線検査の数値は調査年代(検査装置の性能)や報告(調査対象となった医療機関による使用方法)によってばらつきがあるため、目安である。
放射線の線量限度には、自然放射線被曝と自己の診療に関わる医療被曝は含まれない[4]。
なお、一度に大きな線量を被曝した場合の線量単位にはシーベルトではなくグレイが用いられるが、X線ガンマ線による被曝に関しては数値に違いがない。

  ※外部(体外)被曝は放射線を受けているときに限られるが、内部(体内)被曝は放射性物質が体内にある限り続く

放射線源を体の内部に取り込んだ場合の被曝を【外部被曝】に対して【内部被曝】という。放射線源を体内に取り込む経路には以下のようなものがある。

したがって、閉じていない傷のある者は放射性物質の取り扱いを避けるべきである。また、放射性のエアロゾルまたは気体のある雰囲気中ではそれを除去できるフィルターを有した呼吸保護具等を装備しなければならない。放射性物質が皮膚表面に付着しただけでは内部被曝とはならないが、手を汚染した場合は、その後の飲食、喫煙または化粧などによって汚染を体内に取り込む可能性が高い。したがって、放射性物質を取り扱う区域内では飲食、喫煙または化粧を行ってはならず、また取り扱いを中断・終了するときは必ず手に汚染がないことを放射線測定器で確認しなければならない。
内部汚染を起こした場合、汚染の除去は外部汚染よりはるかに困難となるので、より長期間被曝することになる。
体内に取り込まれた放射性物質がどのように振舞うかは、その元素の種類と化学形により様々である。例えば、【ヨウ素】は甲状腺に集まる性質があり、【ストロンチウム】は骨中のカルシウムと置き換わって体内に蓄積することが知られている。


【放射性降下物(Nuclear fallout)】は、核爆発や原子力事故で生じた爆発で生じた放射性の塵のことを指す。爆発で生じた物質がいったん上空に舞い上がった後、地上に「降下する」ことからフォールアウトと名づけられた。一般には死の灰として知られる。これは放射能汚染を引き起こす原因である。全面核戦争の際には、大量に発生した放射性降下物が大気中に拡散し、太陽光線を遮る影響で「核の冬」が起きると言われている。日本では第五福竜丸原水爆事件が有名である。主に核兵器の使用に伴う放射性降下物について記述しているが、核兵器以外の要因で生じる放射性降下物も本質的に変わる所がない。