『マルコムX』という見方

マルコムX [DVD]

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キング牧師の非暴力的な考えとは、まったく理解しあえない立場で、黒人を解放する運動を進めていたマルコムが、メッカの巡礼を機会に、真のイスラム教に目覚め、人生の転機でありマルコム自身が大きく発展させた「ネイション・オブ・イスラム」と袂をわかち、やがては邪魔者あつかいされ、結局は殺されていくお話だ。
直接手を下したのは「ネイション・オブ・イスラム」のように描かれているが、国家筋もずっと彼を「尾行」していたようだし、黒人の黒人への暴力を、都合よいといわんばかりに、半ば座視していたような状況も手伝って、ある意味、なぞは続く。

いままでマルコムXの「X」という、名前にエックスをつけること事態が第一印象的に不気味なニュアンスを与えていたし、その印象はまさに、それこそが当初彼の意図したところでもあったわけだが、いずれにしても積極的に、彼について知ろうという動機にかけていたのは事実だ。しかし、この映画はひとつの「マルコム」の解釈に過ぎないが、アメリカの人種差別をたたかってきた歴史を知る上で参考になる。

「『特定の宗教』に根ざした黒人の地位向上の考え方」というのは、合衆国においてどのようにとらえられているのか、興味深い。なにしろ合衆国は、ローマ法王でさえ理解を示している進化論について、それを教えようとすると、結構抵抗を示す勢力が大きいという。また、国教を定めることはしないが、大統領自身が聖書を片手に就任の宣誓をし、国民の80%以上が広い意味での「クリスチャン」という国家においては、どのようにとらえられるのか興味深い。